禅と骨

 映画館で5回くらい見た「ヨコハマメリー」の中村高寛監督最新作!取り上げられてる人は知らないけど何やらすごそうだ。期待でワクワク。

 この作品の主人公のミトワさんは京都のお寺で暮らしているハーフのお坊さんなのだが、知る人ぞ知る存在だったようだ。かなりキャラが濃く、今なら「おもろいハーフのお坊さん」としてタレントさんもできそう。でも本人は自分自身を売りにする気全くなし。

 映画はドラマとドキュメンタリーを交えてミトワさんの人生を紹介していく。最初は「見た目ガイジンだけど日本の心を持った闊達な人」みたいな好印象で見ていたが、話が進むにつれ結構俗な一面もあることがわかり、それがかえって面白い。人間一筋縄ではいかないのである。

 そもそも、この映画ができたのもミトワさんが映画を撮りたいという長年の願いがあり、資金集めのために色々活動しているうちに自分がネタにされてしまったという流れのようだ。見れば見るほど、ミトワさんの人生自体が面白いのだが、ミトワさん本人は自分の人生がウリになるとは全く思わず「赤い靴はいてた女の子」の映画を撮るのだと息巻いている。自分が求めるものと世間から求められるものがズレてるところが面白いというか、自分自身を含めこういう人は多いのだろうなと思った。

 私はミトワさんの生死も全く知らなかったので最後どうなるのかと思っていたがやはりミトワさんは亡くなり、その後の紹介にもかなり時間が割かれている。ミトワさんの人生にこんなに乗っかっていいのかなとちょっと危惧してしまったけど、ドキュメンタリーならそこまで踏み込まなきゃね。

 …で結局、ミトワさんの念願は短編アニメ映画となって結実したのだが、彼の人生のすごさに対してアウトプットがさみしすぎるよなあ。余業でできたドキュメンタリーの方がよっぽどすごいという皮肉。でもとにかくこの作品、「ヨコハマメリー」並みにはまりそう。中村監督は、本当に出会いに恵まれていると思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ムーンライト

 評判は聞いていたけど、あまりハッピーな気持ちになれなさそうな映画ということで二の足を踏んでいたが、やっと勇気を出して見に行った。

 うーむ、やっぱり黒人かつ下流の世界はキツい…そしてゲイとなるとさらにキツい…子供なのに家でも学校でも居場所がないのはキツすぎる。でもそんな彼にも救いの手を差し伸べてくれる人もいる。売人のフアン役の人が素晴らしい。父親のように生き方を見せて、主人公のシャロン少年を支える(売人だけど)。血が繋がっていなくても、そういう出会いはあるんだね。

 ひ弱で内向的でおとなしかったシャロンが、大人になったらムキムキの売人になっていたのはちょっと現実的ではない気はしたけど、心の奥底は少年のまま。唯一の友人・恋人と再会して昔の思いが噴出する。彼の変容に困惑していた友人も、心は変わっていないことを知り彼を受け入れる。

 キツいと思いながらも、映画を見終わる頃には静謐な気持ちになっていた。主人公のその後は語られないけどきっと真っ当な方向へ歩き出すのだろう。明日への小さな希望が見える作品。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ

 この作品はよく買ってる雑誌「Big Issue」で紹介されてて気になっていた。まあ猫が出てるから外れはなさそうだけど…

 ヘロイン中毒でホームレスの主人公が傷ついた猫を世話したのがきっかけで人生がどんどん上向いていく話。路上ライブで猫を抱いて歌ったら猫に人気が集まってお金がたくさん集まったり、Big Issue売りをやっても猫のおかげでどんどん売れたりとか(おかげで仲間といさかいになるけど)。本当に猫様様でいいね(^_^)(^_^)(^_^)

 とにかく、劇中の猫がかわいいので全て許される!孤独な青年の心を癒し人生を立ち直らせたのだから、本当に動物の力は偉大だ。鑑賞中、ずっと口角上がりっぱなしで微笑みながら見ていた。

 猫の姿を見ているだけで幸せ気分になれるので、いろんな人におすすめ。

 最近、弟のところで猫を飼いだしたので私も主人公にあやかれればなとちょっと棚ボタを期待するのだった(笑)

 猫もいいけど犬好きなので、この後公開される「ワンダフル・ライフ」にも期待(笑)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

パッション・フラメンコ

 「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」とともにル・シネマで予告編を散々見ていた作品、やっと本編を見ることができた。でもまあドキュメンタリーだし、いいシーンは結構予告編で使われてるしで想像はつくけど…とにかく、テクニックのすごさを見られればと思って。

 世界的フラメンコ・ダンサーであるサラ・バラスの、フラメンコの過去の巨匠に捧げる「Voce」という公演を中心に話は進むが、巨匠がどんな人達かわからないので門外漢にはちょっと理解が厳しいか…でも踊りと歌とギターがすごいのはわかる。

 人物ドキュメンタリーなので彼女の生い立ちや生活紹介もあるけど、そんなのがもどかしいほど踊りがすごいので踊りが見たいっ!って感じ。公演をまるまる紹介する映画でも良かったのではと…それじゃ失礼か。

 世界的ダンサー(と言っても映画を見るまで存在も知らなかったのだが)が、駆け出しの頃には新宿の「エル・フラメンコ」で踊っていたとは驚き。その頃彼女の踊りを見た人いないのかな。当時から際立っていたのだろうか。

 フラメンコのすごさは充分わかったけど、やっぱりスペイン人のものだよね。自分は自分で、何か日本人らしさを追求していかなきゃと思った。

 ところでこの作品、盛況だった「セルゲイ・ポルーニン」で予告編を見た人が大挙して押し寄せていると思っていたら意外とそうでもなく…フラメンコは本当に素晴らしいのでたくさんの人に見て欲しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

夜は短し歩けよ乙女

 どんな作品かわからないけどタイトルが印象に残りずっと気になっていた作品。まるで私のためにあるようなタイトル!(乙女と言えるようなトシではないけど)えっアニメなの?どんな作品なんだろ…

 見始めの感想は「うっ、ノリが70年代…」まず、70年代によく居た感じの「先輩」に始まり、全体的に古めかしくてむつかしい(むずかしい、ではないのだ)言葉遣い、70年代インテリの世界だよね。登場人物もドテラを着た学生とか、いつの時代よ(笑)懐かしいような苦々しいような気持ちで見ていく。京都が舞台ということで「ヒポクラテスたち」のファンタジー版みたいと思った。

 お育ちがいいと思われる「乙女」が夜の街デビューをするのが木屋町。私も京都旅行に行ったとき、夜の木屋町をそぞろ歩いたのを思い出した。私の場合は一人で飲み屋に入る勇気はなくて(お金もなくて)レトロな喫茶店「築地」が精いっぱいだったけど。実在する場所が出てくるのも旅気分をかきたてる。

 そこで出会いがあって、めくるめく冒険の世界へ…さすがアニメ、荒唐無稽な世界がどんどん展開される。原作を知らないのだが、どんな表現がされているのだろうか。

 原作者のことを調べたら、自分より若い人だったので驚いた。このノリは、てっきり団塊世代の人だと思っていたから。とにかく、こんな世界もあったのかという作品。

 …でやっぱり思うのは「私も、京都で学生生活送りたかったな…」良い作品だと思うけど、若い頃の挫折感がよみがえってしまうのだった(笑)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

たかが世界の終わり

 いい作品らしいと聞きながら、タイトルに気が乗らずなんとなく見ないできてしまった作品。なんだか意味がわからないんだもん…映画が始まってふと「英語で言うなら”It's just thie end of the world"ってとこかな~」なんて思い浮かんだ。そしたら"It's only the end of the world"という英語タイトルが出てきて、うう~ん惜しい!英語の方が意味がわかりやすい。「たかが世界の終わり」じゃなくて「ただの世界の終わり」の方が意味がわかりやすいと思うけど。

 死がせまった劇作家が、自分の死を告げるために12年ぶりに帰郷するが、迎える家族はいわゆる機能不全家族、ここまで話がかみ合ってないのに一緒にいるのが不思議という面々。この作品を鑑賞するということは劇中で延々続く言い争いを聞かされることである。自分も家族にがんの告白をした身としては、主人公がどうやって自分の病気を告白するのかと見ていたが、なんと家族の争いがすごすぎて肝心のことが言えないまま映画は終わるのである。自分の死より怖い家族って、また一番大事なことが言えない家族ってどんなだよ。

 確かに、家族一人一人の立ち位置などよく描かれているけど、世間体は悪くても一人暮らしは気楽でいいと思っている私はわざわざよその家の言い争いとか聞かなくていいやと思ったし…ちなみに、私はがんのカミングアウトは電話だった。みんなの前で告白するってかえって大変じゃない?その場が気まずくなるし。

 この作品は、どちらかというとお芝居向きかも。円満な家庭で暮らして病気に縁のない人が人ごとと思って見れば面白い作品なのかも。ほんと、自分が死ぬことってたかが世界の終わりなのだから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命

 夏休み明けとともに、映画生活も復活。この作品も見そびれていた作品。

 ジャクリーン・ケネディ夫人の人生のうち、夫の死から葬儀までの、いわばファーストレディ最後の4日間に焦点を当てた作品。私はケネディ家の伝記も読んだことがあり、ジャッキーのその後の人生も知っているので一歩引いてしまうけど、まあその位で丁度いいのだと思う。ファーストレディになろうという野心に満ちた人、一筋縄ではいかない。

 劇中で、ジャッキーが血のついたスーツを着替えないままだったり、顔もちゃんと拭いてないままだったのが気になっていたが、混乱というより夫が暗殺されたことを強調するための演出だと知り、さすがだなと思った。夫の突然の死という極限の状態にあっても世間に向けての演出を第一に考える。ファーストレディになる人は演出が人生なのである。こうして彼女は夫の葬儀を無事にやり終える。この辺は、映画からだけだと読み取りづらい。だからネットの評価が低めなのかな。

 その後のジャッキーの人生、子供たちの人生を思うと感慨深いけど、基本的には、劇中の60年代セレブファッションを楽しむ作品かなと思う。もう一度ジャッキーの伝記をおさらいしてみようと思った。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

若者のすべて

 先週に続き、ヴィスコンティ作品お勉強シリーズ。この作品もタイトルだけずっと知っていたけど見ていなかった作品。しかし「若者」って言葉がかえって古さを感じさせる。予想では「家族の肖像」のような70年代イケイケな若い子たちの話かと思っていたけど、違った(><)

 モノクロ作品だし、後年の貴族趣味満載なところは一切ないどころか南部から都会へ出てきた貧乏な家族の話。田舎から出てきたけど中々定職に就けなくて日雇いの仕事をしてたり、今の日本みたいだ。そして若い男性でもラクダのシャツみたいなのにももひきはいてたりと、なんだか昭和の日本映画を見ている錯覚に陥る(笑)日本だと高度経済成長期だけど、この頃イタリアも同様だったようだ。一家が住んでいるのも近代的な団地だし。

 5人の兄弟それぞれをメインにしたエピソードで話は進むが、都会で堅実に人生を発展させていく長男・四男の他に道を踏み外してしまう次男と、同じ女性を愛してしまい次男の尻拭いに追われる三男をメインに話は進む。兄弟が5人もいれば、全員が真っ当な人生を歩むことはまずない。光もあれば闇もある。次男は困った男だが、家族の闇の部分を引き受ける役になってしまったのだろう。そして次男を救おうとする三男(アラン・ドロン)。最初はアラン・ドロンの割に地味な役と思っていたが話が進むにつれどんどん凄みを増した顔つきになり、ただ美しいだけに終わらない演技力に感嘆した。

 映像も凝っているし、話のテンポも良く飽きないし、次男と三男と女性の結末はギリシャ悲劇を見ているかのよう。含蓄深い作品だった。後で、作品について色々調べたらシモーネ役とナディア役の人はその後結婚してたり、アラン・ドロンを始めとしてイタリア人以外のキャストが意外と多かったり興味深かった。

 鑑賞後も余韻がじわじわ来る。今のところ、ヴィスコンティ作品では一番好きかも。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

 映画館で予告編だけ散々見てた作品、やっと本編を見ることができた。バレエ界に疎いので、このダンサーのことも知らなかったけどとにかく表現力が圧倒的!そして類まれな身体能力。身体能力がなく普通の運動でさえダメダメな私はため息つきながら見るのみ。

 彼の適性を見抜いて、一家総出で出稼ぎして彼を支えた家族もすごい。お父さんは普通の人みたいだったけど、お母さんはバレエとかやってたのかな。豊かとはいえない家庭なのに子供を海外へ送り出したり、よくぞ彼をここまで導いたと思う。

 そしてバレエ界の事情も興味深い。イギリスのバレエ団でプリンシパルでも、ロシアでは全然無名で一から出直しとか、意外と各国の交流がないのか。それだけ、国ごとの独自のスタイルが確立しているということなのだろうか。そういえば、バレエはそもそもどこの国の踊りなんだろうとか疑問がわいて後で色々調べてしまった。

 とにかく、難しいことは考えず天才ダンサーの踊りを満喫する作品。しばらく引退はしないようなので、彼がこれからどの方向へ進んでいくのか暖かく見守りたいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

家族の肖像

 タイトルだけずっと知っていたけど見たことがなかったヴィスコンティの作品、やっと見ることができた。ヴィスコンティ監督の作品は何作かみたけど「映像がゴージャスだけど、話は一体なんだったけ」というのが全体的な印象。当時まだ若かった私には消化しきれない作品が多かったと思う。

 タイトルから「ゴージャスだけどちょっと壊れた上流階級家庭の話」と勝手に思っていたが、半分外れて半分当たっていた。壊れた上流階級家庭は出てくるが、彼らが話の中心ではない。主人公は一人静かに暮らす大学教授。そこへずうずうしくてうるさい母子(それぞれに彼氏つき)が引越してきて、教授の生活は段々乱されていって…という展開。下流だけど一人静かな生活を守っている私(笑)は、教授に肩入れしてしまい作品をあまり楽しめないまま話は進んで行く。

 母親に娘公認の若い彼氏がいるとか当時としたら先進的すぎてびっくりだよね。でもこのトシ・この時代になったので「まあ、ない話でもないよな~」と割と普通に見られる。シルヴァーナ・マンガーノ綺麗だなあ。ファッションも素敵だし。でも役柄的には今の私より若いのだろうな(爆)それからヘルムート・バーガーはやっぱり美しい。

 振り回されながらも若い彼らに段々影響されていく教授。やっぱり老人は若さに弱いのだ。最後は体調崩してしまうし。生気を持っていかれた感じだ。

 この作品を見ての教訓は「色々持っているとたかられるし自分も物に対する執着が出るので人生の持ち物は少なくしよう」というのと「人づきあいには気をつけよう」ということなのだが、監督はもちろんそんなことを言いたいのではない(笑)でも私も年を重ねてやっとヴィスコンティ作品を少しは消化できるようになったと思う。これから他の作品も見て、若いころできなかった理解を深めていきたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

より以前の記事一覧